#01 ジェネレーションXのカメラバッグ

#01 ジェネレーションXのカメラバッグ

内田ユキオ 連載コラム 『全ては風の中に』 〜 dust in the wind 〜

#01
ジェネレーションXのカメラバッグ

絶好の写真日和に、コートと中に着るセーターを選び、お気に入りのデニムを履く。長く歩いても疲れない靴にして、さてカメラを持とう・・・と考えたとき、いいバッグがない。カメラだけで持ったときには格好よくても、カメラバッグを加えるとバランスが崩れてしまう。 よく「男の服にはバリエーションが少ない」と言われる。たとえば履くものに限って考えてみると、チノパン、デニム、カーゴパンツ、ウールスラックスなど、どれも形は同じだ。だからディテールにこだわるしかない。それなのにカメラバッグの選択肢は驚くほど少ない。

これまでいくつもバッグを買ってきた。カメラより多いくらいだ。それでも満足できたことがない。 どんな機材も入って、でも軽くて、着る服を選ばず、丈夫で、といった夢のカメラバッグの話をしているのではない。交換レンズと同じだ。いろんなものが撮れるズームは、突き詰めていけば単焦点には勝てない。楽しさでも写りでも。A4の書類が収まり、大口径のズームが縦に入って、ストラップが太く、などと考えるなら昔からあるバッグでいい。 愛用のカメラと交換レンズを一本、それくらいを入れて気分良く歩けるバッグが欲しい。

見た目が良ければ機能はどうでもいいと言っているわけではない。肩から提げた状態でも身体に密着していてカメラを抜きやすく、パスポートやSDカードなどを入れる小さなポケットが必要で、ぶつけたときに機材を守ってくれるクッション性も求められる。 質の高い革やキャンバスの素材で、使い込んでいくことが味になるといいし、ひと目でカメラバッグだとわからないほうがいい。 それで写真を撮り歩き、カフェに入って休もうとしたとき、その空間に馴染んでくれたら理想だ。いちばん大事なことかもしれない。

カメラバッグはカメラを持ち運ぶためだけの道具ではない。 カメラと服のあいだに入り、街とカメラのあいだに入り、撮影と日常のあいだに入り、それらを繋いでくれるものだから。

内田ユキオ
新潟県両津市(現在の佐渡市)出身。公務員を経てフリーに。
タレントなどの撮影のかたわら、スナップに定評がある。執筆も手がけ、カメラ雑誌や新聞に寄稿。著書には「ライカとモノクロの日々」「いつもカメラが」(ともにエイ出版社)などがある。現在は写真教室の講師も務める。
自称「最後の文系写真家」。データや性能だけではないカメラの魅力にこだわりを持つ。
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