#01 夢の答え

大人はなぜ子供に「将来の夢」を聞きたがるのだろう。
将来なんてなるようになるのではないかと幼い頃の私は思っていたが、不躾な質問をする大人に返す言葉は持ち合わせておらず、じっと黙ってうつむいていた。彼らから見れば簡単な問いにも答えられない無愛想な子供だったに違いない。子供らしい返答でもすればきっとにっこり笑って頷いてくれるのだろうと知ってはいたが、私はそこまで親切な子供ではなかった。

現在私は写真家と呼ばれているが、写真家になりたいと思ったことはなく結果的に本業になっていただけである。いや、開業届を提出しているので本業にしたというべきだろうか。
ひとつのことを長く続けることが苦手な私にとっては、写真家という職業は常に新しい被写体と出会うことができるという意味ではおそらく合っているのだろうと思う。
何を写すかは、自分は世界をいかに捉えているかということである。人は見たいものしか見ようとしないものだ。その意味では写真を発表することは自分をさらけ出すことと同義であり、非常に気恥ずかしいものである。

私は基本的に好きなものにカメラを向けているし、写真とはそうした性質のものだと思っている。

2018年に「浜」という私の住む家の目と鼻の先の浜とその浜に集う人々の写真集を発表した。かけがえのない浜での日々をただ残しておきたい、その一心で撮りためたものだ。
浜で過ごしていると、名前など無くても、自分が何者であるのかなど語らなくても良いのかもしれない、と思えてくる。社会的な名前から解き放たれ、身体的に誰かと繋がっていることを実感できる浜という場。その浜で過ごした数年間を写真集という形にしたことで、私は自分にとって写真の何たるかを知り、これからも向き合い続けるのだと思っている。

あなたは今何に興味を持ち、心を動かされるのか。
常に問われ続けそれに喜びを見出し、次に出会うであろう被写体に期待し、その出会いに心を躍らせる。それが写真家であることだと私は思うし、そうあり続けたいというのが今の私の夢だ。

大門美奈「浜」(大門美奈のWebサイト)
大門美奈「浜」(赤々舎のWebサイト)
大門美奈「浜」(Amazon)


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