#04 ピアスの穴

大門美奈コラム4回目 

ピアスを開けたのはごく最近のことだ。
10代の頃から憧れはあったものの、着物を着る機会もそこそこあるし、ピアスを装着していない際のプスリと空いた穴はどうにも苦手だし、と何かと理由をつけては耳たぶに穴を開けることを避けていた。最近では身を着飾るためにわざわざ身体に傷をつける必要はなかろう、という理由に落ち着いていたが、要は痛い思いをするのが嫌だったのだ。

踏ん切りがついたのは、ジュエリーデザイナーの友人ができたということも大きいが、同時期に夫が病気の治療のため腹腔鏡下手術を受けたことに因る。

手術後、夫の腹にポコポコと開いた穴を見てピアスの小さな穴のひとつやふたつで悩んでいたことがバカバカしくなり、翌月地元のクリニックに行って開けてもらった。パチン、という音とともに針を通すだけである。夫の腹部の痛々しさに比べたら何てことはない。

そんな妻の気持ちを知らない夫からは「なぜ今更ピアスなんて」と聞かれた(ついでに言えば穴を開けた医者にも聞かれた)。

この年齢にもなって恥ずかしいことだが私は化粧が苦手である。何やら大袈裟な言い方になるが、化粧というのは自分と世界の間に壁のようなものを作ってしまう気がしてどうも落ち着かないのだ。

しかし化粧が苦手とは言いつつ年齢を経るにつれて益々深刻になりつつある肌の悩みからは逃れられない。結局のところ、適当にしている顔から人の目を逸らし、かつ多少は身なりに気を遣っている感を出したいというのが、このタイミングで何十年か使い込んだ身体に穴を開けた理由である。

これだけたくさんの言い訳をして開けたピアスホールだが、何年か経てば元からそこにあったような顔をしているので、左耳のホールが塞ぎそうになってしまうことが度々ある。そのたびに急ぎ細めのゲージのタイプのピアスを装着するのだが、そもそも開けて3年ほどしか経っていないものだから私の細胞もまだまだ不慣れなようでうっかり穴を渡ろうとするようだ。

耳たぶに人工的な空洞を持つ前と後で見える景色は変わったのだろうか。


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