#06 知らない街に本を買いにゆく旅(前編)

#06 知らない街に本を買いにゆく旅(前編)

大門美奈コラム6回目 

新宿以西にはあまり馴染みがない。
所謂中央線沿いの地域になるが、下車したことのある駅は片手で数えられるほどしかない。そのためか東京駅から中央線に乗り継ぐ際は少しばかり緊張するものだ。

このコロナ禍において、本を読むことが増えた。
昔から本が好きだったが、それは本であれば誕生日やクリスマスなどの特別な日でなくても買ってもらえたから、というところに大きく起因しており、現在も本なら何冊買っても良いと思っているようなところがある。

幼い頃、週末に家族そろって出掛ける際は、祖父も父も文庫本片手に電車に乗るのが常であり、今も出掛けにいそいそと本を選んではカバンの中にカメラとともに押し込む、というのが習慣となっている。

本を買い溜めていくうちに「どこで本を買うか」によってその本への期待値のようなものが変わってくることに気付いた。
ネットで目当ての本を買えば重い思いをしなくても良いし、次の日には手元に届くから当然便利なのだが、これがまったくもってつまらない。

宝探しをするような気持ちで本屋の棚を物色し、目に飛び込んできたタイトルに惹かれて中身をパラパラとめくり、ピンときたものを手にウキウキしながらレジカウンターへ進む。
そう、本との出会いは「これから何か良いことが起こりそうな」予感なのである。だからマウスをクリックして運ばれてくるものではなく、自ら感じ取りたいのだ。よくよく考えてみれば、本屋で読みたい本を探す行為はスナップと似たようなものなのかもしれない。

話を戻す。
そのような理由で、胸がちょっとおどるような本屋がどこかにないものだろうか、と探していたところ、気になる店が中央線沿線上にあったのだ。
とはいえ、自由に外出することもままならない世の中。近くに行く用事がない限り、私の住む湘南と呼ばれる地域からはなかなか行けそうもない。
そうこうしているうちに半年あまりの時間が過ぎ、少しずつ日常が戻りつつあったある日、仕事で有楽町へ出掛ける機会があった。そうだ、銀座に出れば丸の内線で荻窪まで一本で行けるじゃないか。行きの東海道線の中ではたと気づいた。そうして急遽私の本屋への旅がはじまったのである。

ブログに戻る

1件のコメント

全くそうですね。NETで買う本はもうこれを買うと決まっていてそれが素早く手元に届くということに対して本屋さんで買う本はまず店に入った段階では何を買うか決まってない。色々本棚を見たりしてパッと目についたものがあれば手に取って、パラパラめくって面白そうだと思ったら買うという風に選ぶ楽しみがありますね。

源間

コメントを残す

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。